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The Fish Story

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  4

9月20日(木)

 今日はついに修学旅行の日だ。
 この日は朝練も無い。
 向こうで一泊二日。結構楽しみだ。
 組み合わせはS&Wが入手した情報どおり
 美佐ちゃんのクラスだった。

遥: どっから仕入れて来るんだろ……

 昨日は美佐ちゃんのテンションがめちゃくちゃ高かった。
 すごく楽しみなんだろうが……
 こっちのテンションは……

アイリス: …………(ず〜ん)
遥: あ〜……いや……
  すまん、どうしても無理なので……
アイリス: わ、わかってますっ……
     わかってるんですけど……
     あうー……っっ。。
遥: 一日だけだから頑張れ。
アイリス: ご、ご心配なくっ!
遥: 心配だー……

 やっぱアイリスもナイショでつれてこーかなー……

遥: じゃ、行って来るよ。
アイリス: はいっ!
遥: …………

 頑張れアイリス。


 …………。


キョウ: よーしみんなそろった?
美佐: よ、よろしくお願いしますっ!
遥: いや、そんなに緊張しなくても……
美佐: で、でもー……
キョウ: 大丈夫大丈夫。
S&W: いつもと同じメンバーにプラス一人だろ。
美佐: やっぱり先輩達と行動するのは緊張します……

遥: でも深雪も美佐ちゃんと同じクラスだと思わなかったなぁ……
深雪: はい。私も遥先輩と同じ組になるとは思いませんでした。
遥: 今日は五人で楽しもうぜ。
深雪: はい。
美佐: (先輩……わかってはいたけどドキドキするよ……)
深雪: 美佐さん。臍を固めましょう。
美佐: は、はいっ!
   え?ほぞ?
深雪: 覚悟を決めろ、ということわざです。
遥: ほら、そろそろ行くぞ。
キョウ: (やってらんないなぁ……
      なーんでオリエンテーリングなんて
      しなきゃいけないんだろ。
      どこかではぐれたフリして一人でのんびりしたいなぁ……)
深雪: (先輩達には悪いですが、見たい神社があるのです。
     何とか抜け出さないと……よーく考えて……
     軽挙妄動ではすぐに捕まってしまいますからね……
S&W: (ここの裏町にある、ガンショップ高谷。
      世界中からレア物が集まっているという情報。
      これは行かずにいられまい……くっくっく……)
美佐: (きょ、今日くらいいいよね、積極的になっても……
     先輩と手をつなぐ……先輩と手を……
遥: おーい。行くぞー。
美佐: は、はいっ!
キョウ: う〜ん……
深雪: 盲亀浮木なのです……
S&W: どうするか……
遥: 何だあいつら……
美佐: さ、さぁ……
   先輩、行きましょう♪
遥: ああ、うん。

 


遥: えーっと、ここが天満神社だな。
美佐: うわわぁ〜……大きな門です……
深雪: すごいですっ。感動ですっ。
キョウ: ふぁぁ……
遥: よーし、行くぞ。
美佐: はい先輩っ!
キョウ: (そろそろどこか行きたいなぁ……
      でもどうやってはぐれようかな……)
深雪: (この神社もとても感動ですけど……
     何か方法は……)
S&W: (銃……軍服……ナイフ……
      早く見たい……)
美佐: あ、先輩。
   その、となりいいですか?
遥: え、うん……
キョウ: おっ!
深雪: あっ!
S&W: おおっ!
遥: な、なんだなんだっ!?
美佐: ど、どうしたんですか皆さん……
三人: な、なんでもない(です)っ!
遥: ?
美佐: ?
キョウ: ほら、行こうよ。
遥: あ、ああ……
キョウ: (ねえあんたたち)
深雪: (はい)
キョウ: (あの子達を二人っきりにさせてあげない?)
S&W: (おお、そうだな。俺もそれを考えていた)
深雪: (私もです)
キョウ: (ふっふっふ……じゃあ作戦が成功したら
      その後は自由行動ということで……)
深雪: (賛成ですっ)
キョウ: (……もしかしてあんた達も……)
深雪: (私は行きたいところが……)
S&W: (ガンショップ!)
キョウ: (よーし、じゃあ作戦決行っ)
遥: お、ここがこの神社の本堂らしいな。
美佐: ここも大きいですね。
キョウ: ねぇ〜、ハルゥ〜♪
遥: な、なんだキョウ、へんな声出して。
キョウ: うっさい。
    あ、いやそうじゃなくて……
    私、あっちの方を見てみたいなーと思ってさ。
遥: あとでそっちも行くぞ。
キョウ: 今見たいのっ!
深雪: 私も見たいです。
遥: 深雪まで……
キョウ: そこでっ!別行動と行きませんかハル〜♪
深雪: 一時間後にここに集合ということで。
S&W: じゃあ、また後でなー。
遥: あ……

 三人はそそくさと向こうに行ってしまった。

遥: …………

 なんだあいつら。

遥: ……行こうか。
美佐: ……え、あ、ははは、はいっ!

 

キョウ: おお……見事に作戦成功だね……
深雪: 初めから共同作戦をしていればよかったですね。
キョウ: ふふー♪これで私達は自由の身!
    ハルと美佐ちゃんは二人きりで行動して進展のチャンス!

深雪: どうでしょうか……
キョウ: ん?
深雪: 進展……すると思いますか?
キョウ: ……いやー……
    親友から見ても進展しないに3000点。

 


 ……それから一時間後。

遥: さーて……
  一通り見たし、そろそろ時間だし、戻ろうか。
美佐: はい、先輩っ♪
遥: 次はどこだっけ……
美佐: 次は少し電車に乗りますね。
   大きな滝です。
遥: 滝かぁ……いいなぁ……
美佐: えっと……ここが待ち合わせ場所でしたよね?
遥: いないな……まだ見てるのかな……
  電話してみるか……

 携帯電話を取り出し、キョウの携帯電話にかける。

キョウ: はーい♪ハルーっ♪
遥: キョウ、今どこにいる?
  俺達は待ち合わせ場所に来てるんだけど。
キョウ: あ、ごめんねハル〜♪
    私達三人、別行動してるからー。
    もうそこにはいないよん♪
遥: お、おいおいっ!!
キョウ: まー、美佐ちゃんと一緒に
    頑張って回ってねー。
    あ、集合場所は旅館の近くで〜♪
    よろしく〜っ♪
遥: こらっ!今どこに……
  …………。
美佐: どうかしたんですか?先輩?
遥: あいつら単独行動してるみたい……
  もうここにはいないってさ。
美佐: え……
   ……今日子先輩はともかく、深雪さんもですか?
遥: そうみたい。
美佐: もぅ〜……みんな自分勝手です……
遥: ……ま、しょうがないか……
  俺達は予定通り行くか。
美佐: あ、はい。
   ……え、あ……
   えええっっ!!!?
遥: ん?どうした?
美佐: い、いえいえいえっ!なんでもっっ!!
遥: ?
美佐: (せ、せんぱいとずっと二人っきりなんて……
遥: ほら、いこうぜ。
美佐: あ、はいっ!

 

遥: ここが高山かぁ〜……
美佐: あぅ……すごい……
遥: すごいな……こんな大きい山というか壁というか見たの初めて。
美佐: 私もです……
   あ、先輩。向こうが順路みたいです。
遥: 行くか。
美佐: はい♪

 しかし大きな壁だなこりゃ……
 これを見ると、俺達がいかに小さいかわかるような気がする。

美佐: (先輩と二人っきりなんだから頑張らないと……手をつなぐ……)
美佐: (えっと……どうしよう……
遥: すごいな〜……
美佐: よーし……

 ――ぎゅっ。

遥: ん?美佐ちゃんどうかした?
美佐: あ、いえいえっ!なんでもないですっ!

 ――ぱっ。

美佐: (うぅ……無理やりつないでも……
遥: しかしあいつらも勝手だよなぁ……
美佐: あ、そ、そうですね……
   深雪さんも行ってしまったのは意外でしたけど。
遥: うん。俺も思った。
  ……キョウはおおかたどこぞの喫茶店でのんびりしてそうだし。
美佐: 佐藤先輩はやっぱり……軍事関係のお寺でしょうか??
遥: たぶんな。
美佐: 深雪さんは……??
遥: ……わからないな……
美佐: ……遥先輩はどうですか?
遥: う〜ん……俺もそこまで興味は無いんだけどさ……
  団体行動とか結構好きだし。
美佐: いきなり二人になってしまいましたけど……。。
遥: あははは……いつもと一緒だね。
美佐: そんなこと無いですよ。
   ゆっくり歩いてます。
遥: あ、そーか……
  なんかデートみたいだね。
美佐: ええええぇぇっ!!!?
   せ、せんぱい?、で、でででで……っ!!!
遥: あはは、慌て過ぎ。
美佐: も、もぅっ!
   先輩、私で遊ばないでくださいよー……
遥: まあ、デートの予行練習だと思って……
美佐: せせ、せんぱいーーっ!!
遥: あはははは……ごめんごめん。
美佐: (私には予行練習ではないです……本番です……
遥: ?
美佐: もぅ……今度から先輩には、走ってる最中一切お水渡しませんからっ。
遥: うわ、それ熱中症で倒れるから勘弁してくれ。
美佐: あはははっ♪さ、行きましょう♪
遥: そうだな。

 

美佐: (手……つながなきゃっ……)
遥: さて、次の場所は、と。
美佐: せ、せんぱいっ!
遥: あれ、どうかした?
美佐: あ、あの……その……
   手をですね……その、手を……

 美佐ちゃんが指を差す。

遥: ん?

 その方向を見ると、おみあげのコーナーがあった。

遥: あ、おみあげコーナーか。
  行こうぜ。
美佐: え?あ、はい……??
美佐: はぁ……

 


遥: 美佐ちゃん?
美佐: あ、はい……
遥: 元気ないみたいだけど……
美佐: 大丈夫です……
遥: えっと、元気だしなよ……
  ほら、この神社。大姫神社って言うんだけど、
  恋愛とかそういうのに縁があるんだって。
美佐: 恋愛ですか?
遥: うん。
美佐: 恋愛……
遥: お、元気でたな。
  行こうか。
美佐: は、はいっ!

 さすがに恋愛で有名な神社。
 カップルや女の子が良く目に付く。

美佐: ひ、人が多いですね……
遥: 確かに。
  って、列になってるぞ……
  お参りも出来ない……
美佐: うわぁ……

 仕方なく列に並ぶ。

神社の人: はい、二列で並んでくださいー。
神社の人: あーすいません。ここは列の中央になりまして、
     最後尾はあちらからに……

遥: 多すぎだろいくらなんだって……
美佐: 何か言い伝えでもあるんでしょうか??
遥: あ、言い伝えがあるぞ。
美佐: あ、やっぱり。
遥: って美佐ちゃん……
  来る前にいろいろ勉強させられたじゃん……
美佐: え、あ……あはは……そうでしたか?
遥: この大姫神社には有名な言い伝えというか物語があってな。
  大城姫物語っていうお話があるんだけど。
美佐: あ、題名なら聞いたことがあります。
遥: 小さな城に小さな城下町。そのでの有名な話だ。
  その小さな城に領主の娘、まあつまり姫がいたんだ。
美佐: 大城姫なのに小さな城なんですか?
遥: 小さな城なんだ。
  で、ある日商人の団体がその城に立ち寄ったんだ。
  姫は商人に、商人は姫に恋をした。
美佐: わぁ〜……素敵ですね〜
遥: でも、領主の姫と商人は身分が違いすぎたんだよ。
  すぐにばれて、城下町の噂になっちゃんたんだ。
  でも、その二人は愛を貫き通したんだって。
美佐: ……すごいですね。
   ……でも、お話は他の神社とあまり違いが無いような……
遥: その姫さんが結構行動力のある人だったみたいで、
  恋人に会いに行くために門番を張り倒したり、すぐに駆け落ちしたり……
美佐: …………
遥: というわけで、いまひとつ勇気が出せない女の子に人気らしい。
美佐: な、なるほど……。。

 しばらく並んでいると、もうすぐというところまで来た。

美佐: (先輩も、やっぱり好きな人のお願いを……)
遥: ん?
美佐: あ、その……先輩は何をお願いするのかなと……
遥: あ、そういえば肝心な事を考えてなかったな。
美佐: あ、あははは……
遥: まあ恋愛で有名だけど、他のお願いしてもいいと思うし。
美佐: あ、そ、そうですね……
遥: 美佐ちゃんはやっぱり、好きな人のことを……
美佐: わわっ!私はその……あの、好きな人なんて……
遥: あはは……
  まあお互い、いい人が見つかるように願いますか。
美佐: は、はい……

 賽銭箱の前まで来る。長かった……

美佐: …………
遥: (あれ、もうお参りしてる……)

 さて、何をお願いしとこうかな……

遥: (そうだな……あの悪夢を見ませんように……)
遥: (あとは、大会でいい記録が出ますように……)
遥: (ん〜、あとは……)

 美佐ちゃんのほうを見る。

遥: (美佐ちゃんの願い事が叶います様に……なんてな)

 

美佐: (よーし……決めたっ)
美佐: (えっと、先輩と手をつなげますようにっ)
美佐: (先輩といい雰囲気になれますようにっ)
美佐: (あとはえっと……先輩と恋人に……恋人かぁ……)
美佐: …………
美佐: (私に、勇気を下さい……)
遥: ……終わった?
美佐: あ、はい。
遥: 行こうか。
美佐: はいっ♪

 混雑している道を避け、やっと一息つく。

遥: あ〜……なんでこんなに大盛況なんだ……
美佐: はぁ、大変でした……
遥: 美佐ちゃん、これ食べる?
美佐: え、あ……水あめなんていつの間に……
遥: いや、平日なのに屋台が出てたからつい……
美佐: ……もしかしたら、なにかの記念日だったんでしょうか……?
遥: あ、そうかもな……そこまで覚えてないけど。
美佐: やっと落ち着けましたね、先輩。
遥: そーだな……疲れた……
美佐: ……先輩はさっき、何をお願いしたんですか?
遥: え、おれ?
  ん〜、大したことはお願いしてないけど……
  大会で記録残せますようにーとか、悪夢を見ませんようにーとか。
美佐: わっ!大会のことお願いするの忘れてましたっ!!
遥: えっ!い、いいよ俺だけお願いすれば……
美佐: ご、ごめんなさい……
   えっと……それだけですか?
遥: 後は……
  あ、美佐ちゃんのお願いが叶いますようにって……
美佐: あわっ!!?
   そ、そうですか……
遥: あははは……
  美佐ちゃんはどんなお願いを?
美佐: えぇっ!?わ、私ですか!?
   そんなっ、大したこと無いんですよ、大したこと……
遥: ほほー……思いっきり動揺しているということは……
美佐: あぅぅ……っ!!
   は、早く次のところに行きましょうっ!!
遥: あ、こらこらっ。

遥: うっわ〜……

 駅に行くための道は、人でごった返していた。

美佐: な、何でこんなに混雑してるの……??
遥: こりゃすげえな……
美佐: 他の道は無いんでしょうか……
遥: う〜ん……駅に行く道はこの道を通るしかなさそうだし……
  しょうがないな、いくか……
美佐: は、はい……
遥: じゃあ……

 ――ぎゅっ……。

美佐: え?
遥: 行くか。
美佐: あ……先輩……
   手……
遥: これならバラバラにならないだろ?
美佐: あ、はいっ!

 手をつないで、人ごみの中を進む。

美佐: (先輩と手をつないで歩いてる……)
美佐: (……夢みたい……)

 何とか抜け出し、ようやく普通に歩ける場所まで来た。

遥: ふぅ……
  大丈夫か?
美佐: は、はいっ!
遥: いやぁ、大変だった……

 俺は手を離す。

遥: ……?
美佐: あ……すみません……
   えっと……

 美佐ちゃんが、俺の手をそのままつかんでいた。

美佐: 手っ!
   その……もう少しつないでいてもいいですか……?
遥: え……
  あ、うん。いいけど。
美佐: あ、有難うございます……
遥: ……まあ、いいか。

 手をつなぎながら、駅へと向かう。

遥: …………
美佐: …………(ドキドキ……)
遥: その、次の場所はだな……結構観光名所らしくて……
美佐: は、はい……

 

美佐: (お願いした事ひとつ、叶っちゃったな……
遥: お、美佐ちゃんついたよ。
美佐: うわぁ〜……景色がすごいです……

 美佐ちゃんが柵の方に駆け寄る。

美佐: 高いですね……うわぁ……
遥: 本当だ……崖の上だな……
美佐: ひゃぁ〜……落ちたら痛そうですね……
遥: いや、普通の人は死ぬと思う。
美佐: さ、行きましょうか♪

 手をつないで神社の敷地に入る。

美佐: うわぁ〜〜っ!!
遥: こりゃすげえ……

 神社の敷地内も、周りは崖、崖、崖。
 見晴らしいいなぁ……いや、ここまでだと逆に怖いって。

美佐: すごいですね、先輩……
遥: うん、すごい……

 思わず柵のそばから辺りを眺めてしまう。

遥: …………

 ふと、隣の美佐ちゃんを見る。

美佐: …………
遥: …………

 ……そっか、いつものジャージ姿じゃないから違和感が……
 長袖の私服を着ている美佐ちゃん……う〜ん……

遥: 私服だと雰囲気が違うな……
美佐: へ?あ、はい……
遥: …………

 

美佐: (……なんだか変な感じです……)
遥: (あれぇ……なんか話しづらい……)
美佐: …………
遥: …………
美佐: え、え〜っと……先輩?
遥: あ、なんだ?
美佐: あ……
   この神社で最後ですよね。
遥: あ、ああ、そうだな。
美佐: それじゃあ、今日子先輩達と合流しないといけないですね……
遥: ……そうだな。
  ……でも、まだ時間あるし……
  このあたりちょっと見て行こうか?
美佐: えっ……えっ!!?
遥: 行こうぜ。
美佐: は、はいっ!
遥: ?
美佐: (これってもしかして……デートのお誘い……)
美佐: …………
遥: ??
美佐: (……そんな訳ないか……

 手をつなぎながら近くを探索してみると、崖、崖、がけ……
 崖ばっかりだなおい……

遥: 崖だなー……
美佐: ……崖ですねー……
   この神社周辺が隔離されてるみたいです。
遥: 確かに行きに通った道が崩れたら孤立しそうだなぁ……
美佐: あはは……
遥: ……ん?

 道路の脇に、石の階段が見えた。

遥: あれは……?
美佐: せんぱい?
   どうかしましたか?
   あんまり崖に近づくと危ないですよ?
遥: 見てみなよ。階段がある。
美佐: あ、こんなところに……

 木に隠れて見えなかったけど、
 ずっと下のほうに続いている階段があった。
 結構不気味な感じだ……

遥: …………
美佐: ……行って見ましょうか。
遥: うん。当然。

 一段一段降りていく。どこにつながってるんだろう……

美佐: うわぁ……
遥: とりあえず下は見ないほうがいいな……

 すぐ右の方は崖。こりゃこええや。

遥: ……お。

 目の前に、少し広くなっている場所が現れた。
 というか行き止まり……
 古いベンチが何個かある。
 お、横には……

美佐: うわあっ!滝ですっ!!
遥: この滝もでかいなー……

 ここも観光名所だったのだろうな。
 ……結構危ないところだけど。

美佐: わぁ……
遥: あ、柵に寄りかからない方がいいぞ。
  結構錆びてるし。
美佐: あっ、そうですね。
   すごいなぁ〜……♪
遥: …………
美佐: (先輩と二人っきりでこんな綺麗なところに来られるなんて……♪)
美佐: 先輩っ♪
   あの神社の効果は期待してもいいと思いますよ♪
遥: え、もしかして願いが叶った?
美佐: あ……ああっ、いえっ、綺麗な景色が見たいって祈ったんです……
遥: え?あ、ああ……そうなんだ。
美佐: だからきっと、大会でも今度こそ入賞できますよ!
遥: 入賞ですか……いやあ、辛いなぁ……
美佐: 大丈夫です!
   以前よりすごく早くなってますから、先輩は。
遥: 入賞ね……
  よし……大会まで一緒に頑張ろうぜ。
美佐: はいっ♪

 


キョウ: やっほーハルぅ〜♪
遥: やっほー……ってお前な……
キョウ: あはははー♪
    まあいいじゃない。美佐ちゃんがいたし、
    二人っきりでデート……
遥: だぁっ!!何がデートだこの怠け者めっ!
キョウ: あははー♪ごめーん♪
遥: 覚えとけよキョウ……
美佐: 深雪さんまでいなくなったのは意外でした……
深雪: すみません。どうしても見たい神社があったのです。
美佐: もぅ〜〜……
深雪: でも、いいことがあったみたいですね、美佐さん。
美佐: えっ!!?
   えっと……うん……
S&W: おい今日子に遥。
    旅館に入ってからゆっくり話せよ。
    もうすぐなんだしさ。
遥: !
キョウ: え、エスダブ!?
S&W: なんだ?
キョウ: 正人が真面目ぶってる……
遥: 熱でもあるんだろ。
  ところで正人って名前だっけ?S&Wって。
キョウ: 確か。
S&W: ほら、もういいから早く旅館に入ろうぜ……
遥: そうだな……

 

美佐: へ……わっ……

 班ごとに部屋が割り振られているらしい。

美佐: い、一緒なんですかっ!!?
キョウ: そうなんだ。まあいいけど。
遥: 一般的な反応じゃないぞキョウ。
深雪:私も問題ないのです。
S&W: こっちも一般的じゃないみたいだが。
美佐: えっと……あぅ……
遥: 班ごとに部屋割りなんて元から決まってたっけ?
キョウ: 知らないけど……いいよ別に。
深雪: 問題ないのです。
美佐: うぅぅ……

 ということで部屋に入る。

キョウ: へー……結構広いね〜♪
深雪: 見晴らしもいいのです。
遥: はあ、一息つけるな。
キョウ: あれ、この後はどうするんだっけ??
遥: もうすぐ夕飯だろ、確か。
キョウ: その後お風呂か〜……
    先にお風呂入りたいなぁ〜……
美佐: (ドキドキドキドキ。。)
キョウ: (うっわ〜……美佐ちゃん大丈夫かなぁ……
遥: 美佐ちゃん。大丈夫か?
  なんか震えてるけど……
美佐: はははははははいっ!!
深雪: (気の毒なのです……)
美佐: えっと、大丈夫ですよ!大丈夫っ!
遥: それならいいけど……
キョウ: 夕食まで何してようかな〜……
遥: あれ、S&Wは?
美佐: あっ、あちらにいますよ。
キョウ: なにしてんのあいつ。
S&W: やっと銃が触れる……くくくく……
遥: …………なんかやばい人になりつつあるな、あいつ。
キョウ: すでにやばい人だって。
深雪: だから挙動不審だったんですね……
遥: モデルガンだからいいものの……

 

 ……で。
 夕食を食べて、少し部屋でくつろいでいると、風呂の時間になった。

キョウ: お風呂だーっ♪
遥: やけに嬉しそうだな、キョウ。
キョウ: 汗が気持ち悪くてさ〜……
    早くいこっ♪マイシャンプーあんどコンディショナー装備〜♪
深雪: はい、今日子先輩。
キョウ: 恒例の胸もみもしっかりやるぞーっ♪
遥: こらこらこら……頼むから暴れるなよキョウ……
キョウ: はーい、ほどほどにしまーす。
S&W: ……この二人は域を遥かに超えてるな。
深雪: そう……ですね。
美佐: あ、すみません。
キョウ: およ、どったの美佐ちゃん。
美佐: ちょっと体調が悪いみたいなので、私はやめておきます。
遥: え、美佐ちゃん大丈夫か?
美佐: あ、先輩、はい……
S&W: 本当だ、真っ赤だ。
キョウ: いや、それはいつものあれじゃないの?
深雪: 無理はしないほうがいいのです。
キョウ: そっかぁ、了解です!
    じゃあハル、行って来るよ。
深雪: お先にです。

 そう言うとキョウは急ぎ足で出て行った。
 ……途中で走りそうだなあいつ。

遥: ……で、大丈夫?
美佐: え?あっ!はい!
   ちょっと体調が悪いだけですから。
遥: 横になってれば?
美佐: 大丈夫ですよ。
遥: それならいいけど……
美佐: そういえば夕食の時、私達みたいな男女混合の班は、
   あまり見ませんでしたね?
遥: う〜ん……まあ普通はそうか……
S&W: ……ところで、二人きりの修学旅行はどうだったんだ?
美佐: うわっ!!?
遥: お、おいっ!S&Wまで言うか!?
S&W: 面白いなー、お前たちは……
遥: まぁでも……結構楽しかったな、美佐ちゃん。
美佐: へっ!?は、はいっっ!!
S&W: へー、そうかそうか。
美佐: 佐藤先輩はどうでしたか?
S&W: お、柿崎くん。聞きたいかっ!?
美佐: えっ!あ、あの、はい……??
遥: ……もしかしてその話題振らせるために……
S&W: いいか〜柿崎くんっ!この銃は自動――
美佐: え、えっと、あの……。。

 始まったらなかなかとまらないS&Wの話。
 これさえなければまともなんだけどなぁ……

 …………。

S&W: とまぁ、S&Wがいかにすばらしいか、わかったかな?
美佐: は……はい〜……。。
遥: お疲れ、美佐ちゃん……
美佐: あぅ……。。
遥: それにしても、今回買ったのは小型が多いんだな。
  でかいマグナムや、対戦車用を好むお前にしては珍しいな。
S&W: いや、その方面も一通り買ったぞ。
遥: え、そうなの?どこ?
S&W: 郵送にしてもらった♪
    さすがにでかすぎて今は持ち歩けないからな。
遥: …………
美佐: ほ、本当に銃がお好きなんですね……
遥: いや、銃というより軍隊マニアだし。
美佐: あ、なるほど……

 しばらく三人で話していると、キョウ達が戻ってきた。

キョウ: ただいまー♪
遥: お、帰ってきた。
キョウ: 次は男子の番だね。
遥: そうだな。
深雪: はぁ、暑いのです……
キョウ: ねぇハルぅ〜♪
    水も滴るいい女♪
遥: へー。
キョウ: うわー……中途半端な反応だなー……
遥: 滝にでも打たれてくれば?
キョウ: つ、冷たいよハル……
S&W: 残念ながらこの近くに滝は無い。
遥: つまらん。
キョウ: いやあの、お二人さん意味わかんないんですが。
S&W: よし、行くかっ。
キョウ: スルーですか!?
    SWまでいっしょになって〜っ!!

遥: 銃は置いていけ。
S&W: 聞けぬ相談だな、遥。
キョウ: むー……
遥: あ〜……後で遊んでやるからすねるな。
キョウ: むむむー……

 むくれるキョウをなだめてから、部屋を出た。

 …………。

今日子: ……さてと。美佐ちゃん。
美佐: へ?は、はいっ!
深雪: すごい変わり様なのです……
今日子: 体調悪くてお風呂に入らないのはいいけど、
    今日一日歩いて、汗かいちゃったでしょ?
    汗の匂いを抑えるやつとかしておいた方がいいよ。
美佐: あ……はい……
   でも私、そういうのって使ったこと無くて……
今日子: えっ、そうなの?
    めずらしいね……
深雪: 必需品なのです。
今日子: はいこれ、私のだけど使う?
美佐: あ、有難うございます。
今日子: う〜ん、美佐ちゃん運動部なのに
    そういうの疎いと危ないぞー。
美佐: そ、そうですか??
深雪: 遥先輩は全く気にしなそうな人ですけどね。
今日子: 確かにそれはそうかも……
    まあ、気にするに越したことは無いって。
美佐: わ、は、はい……
今日子: とまあ、それは置いといて〜♪
    ハルとはどこまで行ったのよ〜うりうり〜♪
美佐: えっ!?な、何がですかーっ!?
深雪: 私も興味津々なのです。
美佐: え、あの、別に何も……
今日子: もぅ〜!美佐ちゃんダメだよそれじゃあ!
    そんなことじゃ横から現れた謎の美少女転校生とかに
    すぱーっと取られちゃうぞハルがー!
深雪: ベタな展開ですね、先輩。
美佐: あ、あのっ、別にその遥先輩のことをそんなふうには、
   そのえっと……
深雪: え……あ、そうなんですか?
今日子: そうそう。ばれてないと思ってるの美佐ちゃんだけだよ〜。
美佐: ええっ!?ど、どうして深雪さんまで……
深雪: えっと……残念ながらバレバレなのです……
美佐: ええーっ!!?
今日子: で、どうなのさ?
美佐: で、ですから……何も無かったですよ……
今日子: ふーん……そか……
美佐: あうぅ……っ。。
深雪: サクサクっと告白するのです。
美佐: 深雪さんまでーっ!?
   ですから私は別に……
今日子: まだまだかかりそうだなぁ……

 

遥: ん?なんか重い空気が……
S&W: どうした遥。
遥: あ、前方斜め右方向に彩乃発見。
S&W: そうか、彼女も一年だったな。
遥: よう、あや……
彩乃: あ、遥せんぱい、SW……こんちはっす……
遥: ど、どんよりとしてますね……
  あ、そうか……咲姫乃先輩は三年だもんな。
  ということは離れ離れなわけか。
彩乃: あうぅ〜……言わないでくださいよ〜……
遥: 見た通り元気が無いな。
  いつもはキョウ以上に元気なのに。
彩乃: はい……やっぱりお姉さまがいないとダメみたいです私。。
   ああ、お姉さま……
   恋しいですLOVEですぎゅっとしてほしいです〜……。。
遥: …………
S&W: 重症っていうか壊れてるぞこの子。
彩乃: はぁぁ〜……
S&W: 電話でもしてみたらどうだ?
彩乃: うぅ……そう思ったんだけど、
   電話してしまうと余計会いたくなるというか恋しいというか……
遥: ……まあ、解決方法は早く寝ることぐらいかな。
  頑張れ彩乃。
S&W: 元気出せ……明日になれば会えるからさ。
彩乃: 先輩達ありがとうっす……
   それじゃ私はこれにて……
   はぁぁ〜〜……おねえさま……
遥: …………今更ながらすごいなあの二人の仲は。
S&W: 松竹の二人って噂になるのも納得がいくな。
    まあ、噂って言うか真実だが。
遥: あれ、どっちの苗字が松だっけ……先輩か?
S&W: 先輩だろ。松 咲姫乃と竹 彩乃。
遥: そうだっけか……
S&W: 梅がいれば松竹梅とそろうんだけどな。
遥: いや、それは揃わなくていい……

 

深雪: そろそろ就寝時間ですか?
キョウ: はやーっ!
    お風呂でてからまだ数分も経ってないよ〜?
美佐: 布団を用意しますね。
キョウ: うぅーーっ!!早すぎるよーっ!つまんないよーっ!
    ねえ、まだ起きてようよ!みんなでゲームしよう♪
S&W: 面白そうだな。
深雪: そうですね。面白そうです。
美佐: え、でも就寝時間が……
キョウ: 美佐ちゃんはいいこだねぇ〜……
    ハルはどう思うー?
遥: まぁ……確かにキョウの言う事も一理あるな。
  折角の修学旅行なわけだし。な、美佐ちゃん。
美佐: う〜ん、いいのかなぁ……
キョウ: うんうん♪じゃあ決まりだねー♪
遥: あ、ちょっと待て。
  就寝時間になる前に電話してくる。

 部屋を抜け出し、携帯電話を取り出す。
 ”かなり”アイリスが心配だったからだ。

遥: 大丈夫かなぁ……ただでさえ普段から寂しがりなのに。
アイリス: 『はい、飯田です……
遥: ……暗いなアイリス。
アイリス: 『あっ!は、遥様ですかっ♪♪
遥: 大丈夫か、一人で。
アイリス: 『寂しいです!怖いです!
       遥さまぁ〜……早く帰ってきてください〜……
遥: ……予想どおりだな、その反応……
  まあ、明日には帰るから、それまで何とか頑張れ。
アイリス: 『は、はい……』
遥: ……なんかさっきの彩乃みたいだなー……
アイリス: 『はい?』
遥: じゃ、おやすみアイリス。
アイリス: 『は、はいっ!おやすみなさい!

 電話を切って、ため息をひとつ。

遥: めっちゃ不安だ……

 部屋に戻ると、すでにメンバーがスタンバイしていた。

キョウ: よーし!ハルも来たしやりますか〜♪
深雪: 恒例のトランプですね。
S&W: で、何をしようか……
深雪: 七並べがいいのです。
S&W: ブラックジャック。
美佐: えっと、ポーカーとか……
キョウ: 大貧民ー♪
遥: 大富豪ー♪
S&W: ……まとまり無いなー俺達。
深雪: 佐藤先輩、ゲームなのに大げさなのです。
S&W: それもそうだな。
キョウ: どうするの?
S&W: 唯一かぶった大貧民でいいかな?
美佐: あ、はい。
深雪: かまわないのです。
S&W: 決まりだな。
キョウ: ……どうでもいいけど、
    ホントの名前は大貧民なのかな?大富豪なのかな?
遥: 知らん。
  ところでみんな、大富豪はやったことあるよな?
深雪: もちろんです。負けない自信があるのです。
美佐: えっと、自信はないけど頑張りますっ!
遥: いや、別にそこまで気合入れなくても……
S&W: まあ、勝負は勝負だ。
    よーし!今日こそは少なくても今日子に勝つ!
キョウ: ふっふー♪私とハルに勝てるかな〜?
    私たち無敵だもんねー♪
遥: でもキョウ。今回は五人だからわからないぞ。
キョウ: 大丈夫大丈夫〜♪
深雪: 自信満々ですね、お二人とも。
キョウ: よく遊んでるから、これで。
    あ、そうだ〜♪こんなにいるんだからさ、
    ビリになったら罰げぇ〜む!なんてどぅ?
深雪: 罰ゲームですか?
キョウ: そうそう!
    例えば負けた人に勝った人が命令できる
    王様ゲームもどき〜っ!とか。
美佐: 王様ゲーム……?
キョウ: 例えばキスとか
美佐: き、キスーーっ!!!?
遥: アホか、そんなことはやらんぞ。
キョウ: じゃあじゃあ!
    負けたら脱ぐとか♪
美佐: ぬ、脱ぐって……。。
遥: 何でキョウはいつもそっちの方向にもっていこうとする……
  それも却下だぞ。当然ながら。
キョウ: はぁ、つまんない……
    じゃあみんなは何もしなくていいよ。
    私が負けたら脱ぐ〜♪
S&W: それならいいんじゃないか?
遥: よし、それで行こう。
キョウ: …………あれぇ?
    えっと、何で止めないのかなー?
遥: よし、やるか。
深雪: そうですね。
キョウ: ううー……ひどいよハルにSW〜……
遥: 負けなきゃいいだろ?
キョウ: ああ、そっか。
    負けなきゃいいんだよね。簡単だ、うん。
美佐: …………。。

 と、そんなこんなで始まった大富豪だったが……

美佐: うぅぅ……
深雪: また危なかったのです。
S&W: う〜む、何故遥に負けるのだ俺は……
遥: たまたまカードがいいんだよ。
  美佐ちゃんにカードも貰ってるし。
キョウ: 美佐ちゃん、五連敗だね……
美佐: み、みんな強いよぉ……
遥: 詰まってきたから、一回リセットしようか。
深雪: リセット?
遥: その名の通り、初めからやるってことだ。
S&W: いいぞ。どうせ俺は平民だったし。
キョウ: 私も負けないからいーよ♪
遥: あ、そうだ。最初は美佐ちゃんに俺がカードあげるよ。二枚。
美佐: い、いえっ!大丈夫です!
   が、頑張ります!
遥: そ、そう?
S&W: おおー、柿崎さん怖いぐらいに気合入ってるなぁ〜……
    姫も頑張らないとなー。
深雪: む……まだまだ負けたわけではないのです。
   佐藤先輩より今度こそ早く上がるのですっ。
キョウ: よーし!いくぞーっ♪

 …………。
 …………。
 楽しい時間はあっという間に過ぎるもんで。

キョウ: そろそろねましょー♪
深雪: そうですね。
S&W: そういえば、まだどこで寝るか決めてなかったけど。
キョウ: あ、はーいっ!私ハルの隣がいいっ!
美佐: え……。。
S&W: じゃあそんな感じで。
遥: ちょ、ちょっとまていっ!
S&W: 異存ない人ー。
深雪: はい。
キョウ: はーい♪
美佐: え、えーっと……。。

 結局、俺とキョウが境界線となることに……
 ……まあ、確かにその方がいいかも。
 美佐ちゃんや深雪が隣よりかは眠れそうだし……

美佐: それじゃあ、おやすみなさい、先輩。
遥: うん。おやすみ、美佐ちゃん。
キョウ: ……あはは、二人とも……恋人、みたいだね……
美佐: えっ!いえあの……っ。
キョウ: あははっ♪動揺してる動揺してる。
深雪: 私も恋人ほしいです。
遥: 深雪まで言うか。

 電気が消え、俺は目を閉じる。

遥: (今日は結構新鮮だったな……)
遥: (学校での美佐ちゃんとはちょっと違う感じで……)
遥: (う〜ん、あれが本当の美佐ちゃんなのかもしれないけど)
遥: (……アイリス大丈夫かなぁ……
遥: (あ〜……もうねよう……)


 …………。

 …………。

 …………。

美佐: …………はぁ……

 私は静かに起き上がると、用意しておいたタオルと下着を取り出した。

美佐: …………。

 そのまま部屋を出て、大浴場の方に歩く。
 パンフレットには夜2時まで開いていると書いてあったから、まだ大丈夫だと思う。
 先生に会ったら……えっと、頑張ってごまかそう……

美佐: ……♪

 幸い、先生には見つからなかった。
 一応警戒しながら更衣室に入る。
 あ、誰もいない。良かった……
 服を脱ぎ、浴場へのドアを開ける。
 貸しきり状態の浴場はとても広く感じた。

美佐: はぁぁ〜〜っ……。

 お湯に入ると同時に、力が全て抜けた感じ。
 今日は先輩と一緒だったから、ずっと緊張してて疲れたんだろう……
 それに今日は汗もたくさんかいたし、
 やっぱりお風呂に入りに来たのは正解だったなー。

美佐: はぅぅ〜〜……

 緊張が解けた反動で、ぐにゃぐにゃになってる私……

美佐: ……はぁ……せんぱい……

 今日は先輩とずっと一緒にいて……
 お話して、綺麗な景色や滝を見て、手をつないで……
 手……私、先輩の手、握っちゃった……
 恥ずかしくて、先輩に心臓の音が
 聞こえちゃうんじゃないかってくらい……

美佐: (あの神社、ホントにご利益あるみたい……

 じゃあ、勇気も出せるのかな?
 でも、勇気って自分で頑張って出すものだし……
 神頼みするものじゃないよね。

美佐: (でも……いつかは……)

 言わなくちゃいけないときが来る。
 その時、どうなっちゃうんだろうか、先輩と私の関係は……
 怖くて、言えない……

美佐: (怖いなんていまさら……馬鹿だなぁ、私……大馬鹿……)
美佐: (でも、好きだから……大好きだから言わなきゃ……)
美佐: (でもなぁ〜〜……

 自問自答を何度か繰り返した後、浴場から上がる。
 …………。

美佐: あっ、また痩せてる♪
   陸上部入ってよかったなぁ……
美佐: ……単に痩せればいいってものじゃないけど……

 さて……帰りも気をつけないと……
 …………。
 誰にも見つからないで、部屋の前にたどり着いた。
 そのまま静かに部屋の中に入る。

美佐: せんぱい……

 寝ている先輩の方を見る。
 わ……すごくドキドキする……

美佐: ……先輩、大好きですよ……
美佐: ……わ……恥ずかしくて死んじゃうよ……

 面と向かって言うなんて、とても無理だと思う……
 はぁ〜……

美佐: …………。
   おやすみなさい、先輩。

 …………。
 …………。

>美佐ちゃんかわいすぎー。5へ。

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